【Solidity】第1章第9回:Ethereum Virtual Machine(EVM)とは何か?

本記事では、Ethereum Virtual Machine(EVM)の仕組みや役割について解説します。Solidityを学ぶ上で欠かせないEVMの基本概念を理解しましょう。
0. 記事の概要
この記事を読むメリット
- EVMの基本的な仕組みを理解:スマートコントラクトの動作環境について学べます。
- ブロックチェーン全体の理解が深まる:EVMの役割を知ることで、Ethereumの仕組みを包括的に把握できます。
- Solidity学習の基礎を固める:スマートコントラクトの設計やデプロイ時の重要なポイントを理解できます。
この記事で学べること
- EVMの役割と基本構造
- スマートコントラクトとEVMの関係
- EVMのガスと最適化の基本概念
1. Ethereum Virtual Machine(EVM)とは?

1.1 EVMの概要
EVMは、Ethereumネットワーク上で動作する仮想マシンです。スマートコントラクトの実行環境を提供し、ネットワーク全体で一貫性のある計算を可能にします。
1.2 EVMの役割
EVMは、以下のような役割を果たします:
- スマートコントラクトの実行:Solidityで記述されたコントラクトをバイトコードにコンパイルし、EVM上で実行します。
- 状態管理:コントラクトの状態を保存し、トランザクションに基づいて更新します。
- セキュリティの確保:悪意あるコードや操作を防ぎます。
2. スマートコントラクトとEVMの関係
2.1 スマートコントラクトの実行プロセス
スマートコントラクトがEVMでどのように実行されるかを以下のプロセスで説明します:
- Solidityでコントラクトを記述
- Solidityコードをバイトコードにコンパイル
- トランザクションによってEVMがバイトコードを実行
2.2 スマートコントラクトの状態管理
EVMは、以下の2種類のストレージを使用してスマートコントラクトの状態を管理します:
- ストレージ:永続的に保存されるデータ
- メモリ:一時的に使用されるデータ
3. ガスと最適化

3.1 ガスの概念
ガスは、EVM上で計算を実行するためのリソースです。スマートコントラクトの各操作には、ガスコストが発生します。
// ガスを消費する例
function add(uint256 a, uint256 b) public pure returns (uint256) {
return a + b; // ガスを消費
}
動作解説
この関数では、加算操作が実行されるたびに一定量のガスが消費されます。
3.2 ガス最適化のテクニック
スマートコントラクトの効率を高めるために、以下のテクニックを使用します:
- ループの最小化:不要な繰り返し操作を避ける
- ストレージの読み書き回数を減らす:ストレージ操作はガスコストが高いため、回数を最小限に抑える
- 定数の活用:変更しない値は定数として定義
4. よくある問題と対処法

4.1 ガス不足エラー
トランザクション実行時にガスが不足すると、失敗します。
// ガス不足エラーを防ぐ
function safeExecution(uint256 a, uint256 b) public pure returns (uint256) {
require(gasleft() > 10000, "ガスが不足しています");
return a + b;
}
対処法
gasleft
関数を使用して、必要なガス量を事前に確認します。
4.2 ストレージ操作の非効率性
ストレージ操作が多いと、ガスコストが高くなります。
// ストレージ操作の最適化
contract Optimized {
uint256 public total;
function updateTotal(uint256 amount) public {
uint256 newTotal = total + amount;
total = newTotal;
}
}
対処法
変数をメモリ内で操作し、最後にストレージに書き込むことで、ガスコストを削減します。
5. 練習問題
以下の課題に挑戦してみましょう:
- スマートコントラクト内でストレージとメモリの使用方法を切り替える例を作成してください。
- ガス最適化のテクニックを適用した関数を作成してください。
6. まとめ
本記事では、Ethereum Virtual Machine(EVM)の基本概念とその役割、ガスの仕組みについて学びました。EVMを理解することで、効率的なスマートコントラクトの開発が可能になります。次回は、ガスの概念をさらに掘り下げ、最適化の具体例を紹介します。