【Solidity】第5章第3回:抽象コントラクト(abstract contract)の使い方

本記事では、Solidityにおける抽象コントラクト(abstract contract)の基本構文とその使用例を解説します。抽象コントラクトを活用することで、効率的かつ柔軟なスマートコントラクトの設計が可能になります。
0. 記事の概要
この記事を読むメリット
- 抽象コントラクトの基礎理解:抽象コントラクトの役割と使い方を学べます。
- 柔軟な設計力の向上:抽象コントラクトを活用して再利用性の高いコントラクトを構築できます。
- 設計上のベストプラクティス:抽象コントラクトを利用する場面とその利点を理解できます。
この記事で学べること
- 抽象コントラクトの基本構文と使用例
- 抽象コントラクトを使った実践的なスマートコントラクト設計例
- よくあるエラーとその解決策
1. 抽象コントラクト(abstract contract)とは?

1.1 抽象コントラクトの概要
抽象コントラクトとは、実装されていない関数を含むコントラクトのことです。これらの関数は、派生コントラクトで実装する必要があります。抽象コントラクトを使うことで、コントラクトの構造を明確にし、コードの再利用性と拡張性を高めることができます。
1.2 抽象コントラクトの基本構文
// 抽象コントラクトの基本例
abstract contract AbstractContract {
function calculate(uint256 a, uint256 b) public view virtual returns (uint256);
}
contract ConcreteContract is AbstractContract {
function calculate(uint256 a, uint256 b) public view override returns (uint256) {
return a + b;
}
}
動作解説
この例では、AbstractContract
に定義されたcalculate
関数がConcreteContract
で実装されています。abstract
キーワードを使用して抽象コントラクトを定義し、override
キーワードで関数をオーバーライドします。
2. 抽象コントラクトを活用した設計例

2.1 トークン標準の基盤
// トークン標準の基盤としての抽象コントラクト
abstract contract ERC20Base {
function transfer(address to, uint256 amount) public virtual;
function balanceOf(address account) public view virtual returns (uint256);
}
contract MyToken is ERC20Base {
mapping(address => uint256) public balances;
function transfer(address to, uint256 amount) public override {
require(balances[msg.sender] >= amount, "残高不足です");
balances[msg.sender] -= amount;
balances[to] += amount;
}
function balanceOf(address account) public view override returns (uint256) {
return balances[account];
}
}
動作解説
このコードでは、ERC20Base
という抽象コントラクトを作成し、MyToken
でその関数を実装しています。これにより、標準化されたトークン機能を持つコントラクトを簡単に作成できます。
2.2 アクセス制御のテンプレート
// アクセス制御のテンプレートとしての抽象コントラクト
abstract contract AccessControl {
function hasAccess(address account) public view virtual returns (bool);
}
contract AdminControl is AccessControl {
mapping(address => bool) private admins;
function addAdmin(address account) public {
admins[account] = true;
}
function hasAccess(address account) public view override returns (bool) {
return admins[account];
}
}
動作解説
この例では、AccessControl
をテンプレートとして使用し、AdminControl
でアクセス権を管理する実装を追加しています。
3. よくあるエラーとその解決策

3.1 関数の未実装エラー
抽象コントラクトを継承する際に、すべての抽象関数を実装しないとコンパイルエラーが発生します。すべての関数をオーバーライドしてください。
3.2 インスタンス化の誤り
抽象コントラクトは直接インスタンス化することができません。具体的なコントラクトをデプロイする必要があります。
4. 練習問題
以下の課題に挑戦してみましょう:
- ERC20トークンの抽象コントラクトを作成し、それを継承した具体的なコントラクトを実装してください。
- アクセス制御を抽象コントラクトとして定義し、複数のコントラクトで再利用してください。
5. まとめ
本記事では、Solidityにおける抽象コントラクトの基本的な使い方とその活用例について学びました。抽象コントラクトを活用することで、設計の効率性と柔軟性を向上させることができます。