【Solidity】第7章第8回:コントラクトの自己破壊(selfdestruct)の使い方とリスク

本記事では、Solidityで提供されるselfdestruct
関数について、その基本的な動作原理、具体的な使用方法、そして注意すべきリスクについて詳しく解説します。自己破壊機能はスマートコントラクトの設計において重要な役割を果たしますが、不適切な使用はセキュリティ上の問題を引き起こす可能性があります。
0. 記事の概要
この記事を読むメリット
- selfdestructの基本を理解:コントラクトの自己破壊がどのように機能するかを学べます。
- 実装方法を習得:実際にコントラクトを削除するコードの書き方を習得できます。
- リスクの把握:自己破壊機能の誤用を防ぎ、安全に利用する方法を理解できます。
この記事で学べること
- selfdestruct関数の基本的な仕組み
- 自己破壊の実装方法と注意点
- セキュリティリスクとその回避策
1. selfdestructの基本概念

1.1 selfdestructとは?
selfdestruct
は、スマートコントラクトをブロックチェーン上から削除するための特別な関数です。この関数を呼び出すと、コントラクトのストレージとコードが完全に削除され、残りのEtherは指定されたアドレスに送金されます。
1.2 selfdestructの主な用途
以下は、selfdestruct
が使用される主な場面です:
- 不要なコントラクトの削除:利用が終了したコントラクトを削除する。
- アップグレード可能な設計:古いコントラクトを削除し、新しいコントラクトに切り替える。
- 資金の回収:保有しているEtherを指定アドレスに送金する。
2. selfdestructの基本的な実装例

2.1 シンプルなselfdestructの例
// selfdestructを利用した基本的な例
pragma solidity ^0.8.0;
contract SelfDestructExample {
address payable public owner;
// コントラクトの初期化(デプロイ時にオーナーを設定)
constructor() {
owner = payable(msg.sender);
}
// コントラクトを自己破壊する関数(オーナーのみ実行可能)
function destroyContract() public {
require(msg.sender == owner, "Only the owner can destroy the contract");
selfdestruct(owner); // コントラクトの削除とEtherの送金
}
// コントラクトにEtherを受け取る関数
receive() external payable {}
}
動作解説
- オーナーの設定:
constructor
でデプロイ時のアドレスをオーナーとして登録します。 - 自己破壊の実行:
destroyContract
関数を呼び出すと、コントラクトが削除され、残高がオーナーに送金されます。 - セキュリティ保護:
require
文を使用して、オーナー以外がこの関数を実行できないようにしています。
2.2 注意すべき点
selfdestruct
を使用する際には以下の点に注意が必要です:
- 削除されたコントラクトのアドレスは再利用可能。
- 外部コントラクトが呼び出す際、削除済みコントラクトに依存しているとエラーが発生する可能性がある。
- 資金を送金する際、送金先のアドレスが適切であることを確認する。
3. selfdestructのリスクと回避策

3.1 誤用による資金喪失
selfdestruct
を誤って実行すると、コントラクト内の資金が失われるリスクがあります。そのため、関数にアクセス制限を必ず設けましょう。
3.2 セキュリティリスクの回避策
- アクセス制御:
onlyOwner
などの修飾子を利用して権限を制限。 - コードレビュー: 自己破壊のロジックを慎重に確認。
- テスト環境での検証: デプロイ前に十分なテストを行う。
4. 練習問題
以下の課題に挑戦して、selfdestruct
の使用に慣れてみましょう:
- オーナー以外は削除できない自己破壊関数を持つコントラクトを作成してください。
- selfdestructを使用して資金を特定のアドレスに送金するスマートコントラクトを作成してください。
- 誤用によるリスクを回避するための改善案を考えて実装してください。
5. まとめ
本記事では、Solidityのselfdestruct
関数について、その基本的な仕組みと使い方、そしてリスクと回避策を解説しました。この機能は非常に強力ですが、不適切に使用すると大きなリスクを伴います。適切な制御を加えることで、安全で信頼性の高いスマートコントラクトを構築しましょう。