【Solidity】第9章第5回:DAO(分散型自律組織)の実装

本記事では、Solidityを用いてDAO(分散型自律組織)を構築する方法を解説します。DAOは中央管理者を必要とせず、スマートコントラクトを通じて意思決定が行われる新しい組織の形です。
0. 記事の概要
この記事を読むメリット
- DAOの仕組みを理解: 分散型組織の基本概念とその運用方法を学べます。
- 投票機能の実装: スマートコントラクトによる意思決定のプロセスを習得できます。
- Solidityスキルの向上: 実際にDAOを開発しながら、スマートコントラクトの応用力を高められます。
この記事で学べること
- DAOの基本概念と特徴
- 投票システムの構築
- 資金管理の仕組み
1. DAOの概要

1.1 DAOとは何か?
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、スマートコントラクトによって運営される自律的な組織です。主な特徴は以下の通りです:
- 分散管理: 意思決定は中央管理者ではなく、投票によって行われる。
- 透明性: すべての取引と決定がブロックチェーン上に記録される。
- 改ざん耐性: スマートコントラクトが決定を実行するため、不正な操作が困難。
2. SolidityでのDAO実装
2.1 DAOの基本構造
// DAOの基本実装
pragma solidity ^0.8.0;
contract SimpleDAO {
struct Proposal {
string description;
uint256 votes;
bool executed;
}
address public owner;
Proposal[] public proposals;
mapping(address => bool) public members;
modifier onlyMember() {
require(members[msg.sender], "Not a DAO member");
_;
}
constructor() {
owner = msg.sender;
members[msg.sender] = true;
}
function addProposal(string memory _description) public onlyMember {
proposals.push(Proposal(_description, 0, false));
}
}
動作解説
- DAOのメンバーのみが
addProposal()
を呼び出し、新しい提案を作成できる。 - 提案は
proposals
配列に追加され、後に投票可能になる。 - アクセス制御として
onlyMember
修飾子を使用し、非メンバーの提案作成を防ぐ。
2.2 投票システムの実装
// 投票機能の追加
function vote(uint256 proposalIndex) public onlyMember {
require(proposalIndex < proposals.length, "Invalid proposal");
proposals[proposalIndex].votes++;
}
動作解説
- DAOのメンバーが
vote()
を呼び出し、特定の提案に投票できる。 - 投票が完了すると、該当する
proposal.votes
のカウントが増加する。
3. セキュリティと拡張性
3.1 不正投票の防止策
DAOの公平性を保つため、以下のセキュリティ対策を実施します:
- 投票履歴の記録: ユーザーが重複投票しないようにする。
- 資金管理: DAOのトレジャリー(資金プール)を適切に管理。
4. 練習問題
以下の課題に挑戦し、DAOの理解を深めましょう:
- 投票の最小投票数を設定し、過半数が得られた場合のみ決定が有効になるようにしてください。
- DAOのメンバーが新しいメンバーを追加できるような機能を実装してください。
5. まとめ
本記事では、Solidityを用いたDAO(分散型自律組織)の基本構造を解説しました。適切なセキュリティ対策と拡張機能を加えることで、安全で透明性の高いDAOを構築できます。